ここのところ、都市部の駅の広告メディアのデジタル化が一気に進んでいます。それは、通勤通学で駅を利用されている方には、無意識に肌感覚で感じられているのではないかと思います。
では、なぜ、駅→広告→デジタル化?
日本では「駅」と言えば、自然に「鉄道駅」を連想してしまいますが、最近では「道の駅」や「海の駅」など、車を利用する方の立ち寄り所としても、発展を遂げてきています。高速道路のサービスエリアなどもその一部に入りますね。
こうした駅は、多くの人々が行き交い利用している場所ですし、当然、これまでも多くの情報が、主にポスターなどの紙媒体や看板、POPなどを通じて利用者に伝達されアウトプットされてきました。ところが、こうしたこれまでの媒体は、掲載期間が決まっていたり情報更新に時間が必要だったりで、現状のスマートフォンやインターネット環境の情報伝達のスピード感にはそぐわず、到底追いつくことができなくなってきました。また、さらにもっと多様でたくさんの情報提供や人目を惹く広告効果が必要とされるようになってきました。
そこで、こうした媒体に代わる液晶やLEDディスプレイなどのスクリーンメディアを活用して、デジタルサイネージが開発され、大きく発展を遂げてきているのです。
日本において、デジタルサイネージが登場し大きく発展・普及したのは、ここ10年あまり。具体的には、2007年に東京・六本木の大型商業施設がネットワーク化した約150台のビジョンを館内に設置。このタイミングを機に2007年を「デジタルサイネージ元年」と呼ぶようになりました。
そして、駅のデジタルサイネージは、急速に拡大。登場当初は、駅構内の柱や壁面の広告看板をデジタル化して視覚効果を上げることからスタート。また、ホーム上の線路を挟んだ対面広告看板なども、続々とデジタル化されてきました。最近では、整備が進むホームドアの壁面にも、デジタルサイネージが組み入れられるようになってきています。
さらに、運行案内などの大型のサインボードもデジタル化され、また、並行して駅のインフォメーションボード、いわゆる案内表示板も続々とデジタル化がはかられてきました。
この案内掲示板は以前、近隣の案内地図や交通情報、周辺の飲食店や商店などの情報が、個別に文字あるいは写真で表示される一方通行の情報提供でした。しかし、デジタル化がはかられたことにより、駅の利用者が必要な情報を利用者自ら選択して得ることのできる相互通行の案内板へと進化を遂げてきています。
では、相互通行の情報案内板として、現在、多くの駅に設置され普及してきているデジタル案内版に目を向けていきましょう。多くの情報量を表示できるデジタルサイネージだからこそ、その機能は、まさに多岐・多様。
例えば、「タッチ式」のディスプレイパネル。利用者が操作に戸惑わないように、触れるだけで画面が切り替わる簡単な「タッチ式」が主に利用されています。
そして「多言語化」。訪日観光客が2,000万人を超えた今、2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けて、世界各国の方が「駅」の利用者となります。交通情報や観光案内、周辺の地図や店舗・宿泊施設への道のりなど、有用な情報が簡単に「多言語」で表示される機能は、もはや必要不可欠なマストなアイテムとなっています。
その他、災害などの緊急時の情報提供がリアルタイムで表示される機能を備え、国が推奨する「街のおもてなしメディア」として活用されています。
さらに情報のアウトプットには、手元のスマートフォンやタブレット端末と連動する機能を備えたデジタルサイネージが普及。まさに相互通行を可能にしたデジタルメディアとして利用者が拡大しています。
では、駅で見かけるデジタルサイネージを探してみましょう。みなさんも鉄道を利用する時、駅構内を少し気にして歩くと、いたるところでデジタルサイネージが設置されているのを見つけられるはずです。特にターミナル駅では、多くの多種多様なデジタルサイネージを発見できます。
例えば、北海道の札幌市営地下鉄の大通駅には、多くの形態のデジタルサイネージが設置されています。構内の連絡通路の柱が続々とデジタルサイネージ化されていたり、待ち合わせ場所として利用される広場には古くから設置されている大型ビジョンが情報を発信しています。
また、東京の東急電鉄の二子玉川駅もホームから改札コンコースに向けて、いくつものデジタルサイネージが連なっています。ホームの階段付近の天井には5面に連なる大型のスクリーンメディアが、また階段には、55インチディスプレイが連続して30面も設置されています。また、改札口と隣接のショッピングセンターに向かうアプロ―チには70インチ2面、80インチディスプレイが12面も設置されています。
駅で、何気に視認しているデジタルサイネージ。これらを流れているコンテンツだけではなく、設置されていることを意識して探してみると、こんなところやあんなところにも活用されていることに気づいて、とても楽しくなってきます。
江ノ電の鎌倉駅に設置されたデジタルサイネージは、視覚的工夫がなされた親しみやすい観光地ならではの案内表示板です。周辺地図には、立体的なかわいいイラストで表示され、有名な鎌倉の大仏をはじめ、観光拠点がキャラクター化されたアイコンで表示されています。しかも、タッチすると大仏様や電車が動いたり、波しぶきが上がったり子供たちにも人気で、一日のディスプレイへのタッチ数は7000タッチを超えています。また、季節や時間帯で色合いや雰囲気を変えるので訪れるたびに変化のある案内表示板となっています。もちろん「多言語化」されていて、訪日観光客の観光案内に大きく役立っています。
他にも秩父や日光、京都、川越といった有名観光地の最寄り駅にも、続々と設置されているようです。こうした機能的で親しみやすく、楽しいデジタルサイネージを見つけたときには、ぜひ、操作して体験したいものですね。
駅のデジタルサイネージは、単に広告メディアとしてではなく、そこに行き交う多くの利用者のための情報提供が必要となります。そのため、多言語化やスマホ連動をはじめとする高い機能も要求されています。
こうした多彩で高機能なデジタルサイネージは駅だけではなく、官公庁、神社、観光拠点、空港、高速道路のサービスエリア、商業施設など、多くのロケーションでの運用・展開が期待されます。さらに設置されている「街の価値向上」にも、今後、大きな役割を担っていくことでしょう。
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